忘がちな中間管理職に必要な業務は『吹聴』である
「中間管理職」と呼ばれる立場には、常に板挟みの苦しさがあります。
上からは「現場をまとめろ」「数字を出せ」とプレッシャーがかかり、下からは「無理な指示をするな」「現場の声を聞いてくれ」と不満が寄せられる。
多くの中間管理職が、この間に挟まれ、孤独感を抱えながら働いています。
そんな中間管理職に、私がぜひ意識してほしい業務があります。
それは、『吹聴(ふいちょう)』です。
「吹聴」とは、耳慣れない言葉かもしれません。辞書的には「言い広める」「あちこちで話す」といった意味があります。
しかしここでいう吹聴は、単なる噂話や誇張ではありません。中間管理職だからこそできる「現場と管理職の間をつなぐ潤滑油」としての情報の出し方を指します。
中間管理職に必要なのは、課長(管理職)の「フォロー」
まず、現場で働くメンバーと課長以上の管理職の間には、必ず「思いのGAP(ギャップ)」があります。
課長や部長といった管理職層は、組織全体を俯瞰した立場から数字や戦略を考えています。現場の声をすべて吸い上げる余裕はなく、時に理不尽に見える指示を出さざるを得ない場面もあるでしょう。
一方で、現場メンバーは「自分たちの立場」を守ろうとします。目の前の業務を効率よく、無理なく進めることを優先します。これが、上層部から見れば「もっと頑張れ」「結果が欲しい」というプレッシャーに映るのです。
この思いのGAPを埋めるのが、中間管理職です。
中間管理職は、現場と管理職、両方の立場を理解できる唯一の存在です。現場の実態を知り、管理職の意図も理解する。両者の間に立ち、うまくバランスを取りながら進めることが求められます。
そのためには、単に指示を「伝える」だけでは不十分です。現場が受け入れやすい形で情報を「吹聴」し、悪者になりがちな管理職の意図を和らげる工夫が必要です。
吹聴とは、現場に出せない情報を「チラ見せ」すること
「吹聴」とは、簡単に言えば「現場には公表できない情報を、耳打ち程度に伝えること」です。
もちろん、情報漏洩や守秘義務に反することはしてはいけません。しかし、会社には「未開示情報」が多く存在します。
たとえば:
・会社の戦略変更や人事方針
・取引先との交渉状況
・新しい方針の背景にある理由
・数字目標の設定意図
これらの情報は、現場メンバーには全て開示されないことがほとんどです。
しかし、現場が「なんでこんな無理な指示が出るの?」「なぜ今この作業が増えたの?」と不満を抱くのは当然です。
ここで中間管理職の「吹聴」が効いてきます。
「実は、今上からこういう方針が出ていて…」「あまり大きな声では言えないけど、背景にはこういう事情があって…」と、小出しに情報を伝えるのです。
この時重要なのは、核心には触れず、あくまで「ヒント」や「ニュアンス」を与える程度に留めること。
嘘をつくのではなく、現場の不満を和らげるための「潤滑油」として吹聴を使います。
嘘をつかず、小出しに、相手の不安を和らげる
吹聴をうまく使うコツは、以下の3つです。
- 嘘をつかない
- 情報を小出しにする
- 相手の不安を和らげる
まず、「嘘をつく」ことは絶対にNGです。信頼関係を損ねるリスクが高く、後で必ず自分の首を絞めることになります。
あくまで、事実の範囲で、伝えられる情報を伝えることが大前提です。
次に、情報を一気に全て話してしまわず、「小出し」にすること。これにより、「ああ、上もちゃんと考えてるんだな」「背景があるなら仕方ない」と現場が感じやすくなります。
そして、何より大事なのは「相手の不安を和らげる」ことです。現場の不満の多くは「理由がわからない」「見通しが見えない」ことから生じます。吹聴によって「上も一枚岩ではない」「ちゃんと考えている」というメッセージを伝えることで、不安や不満を和らげる効果が期待できます。
中間管理職は「翻訳者」かつ「潤滑油」
現場と管理職、どちらの立場もわかる中間管理職だからこそ、吹聴はできる仕事です。
現場に伝わる言葉に翻訳し、時には管理職の意図を代弁する。
しかし同時に、現場の声を上に上げる「逆吹聴」も重要です。
「現場からはこう見えています」「こんな不安が出ています」と、管理職に現場の温度感を伝えることで、上も動きやすくなります。
この双方向の吹聴ができる中間管理職は、現場からも上からも信頼される存在になれるでしょう。
吹聴を忘れると、中間管理職は孤立する
逆に、吹聴を怠るとどうなるでしょうか。
現場からは「課長の言いなり」と見られ、上からは「現場の声を吸い上げられない」と評価され、どちらからも信頼を失います。
中間管理職は、どちらか一方に偏ると途端に孤立します。吹聴は、そのバランスを保つための重要な手段なのです。
終わりに
中間管理職は、単なる「伝書鳩」ではありません。情報をただ伝えるだけではなく、現場と管理職の間に立ち、潤滑油として機能する役割があります。
そのために必要なのが「吹聴」。耳打ちレベルの情報を、小出しに、嘘をつかず、現場の不安を和らげる。これができれば、中間管理職としての信頼も高まり、チーム全体の動きがスムーズになります。
ぜひ、あなたも「吹聴」という技術を意識してみてください。きっと、現場の空気感が少し柔らかくなり、自分自身の働きやすさも変わるはずです。